
相談内容
ディーラーで残価設定型クレジット(残価設定ローン)を組み購入した普通自動車で、単独で衝突事故を起こした。車が動かなくなったため、損害保険会社に事故の連絡をした。手配されたレッカー車で修理工場へ搬送してもらい、修理見積を取ったが、高額で支払できない。
このまま売却や廃車をすることはできますか。また、返済中のローンはどうなりますか。
回答
残価設定型クレジットを組んだ車両の所有権
残価設定型クレジットをはじめ、ローンを組んで車を購入した場合、車検証上の所有者はディーラーやローン会社で、購入者は車検証上の使用者と設定されていることがほとんどです。これを「所有権留保」といいます。
車を処分するためには、車検証上の所有者の印鑑証明書や委任状、譲渡証などの名義変更書類を発行してもらわなければなりません。これを「所有権解除」といいます。
「所有権解除」にあたっては、ローン全額一括返済(完済)が求められることになります。したがって、使用者の意思で勝手に車を処分(売却や廃車)することはできません。
<トラブル相談事例はこちら> ローン返済中の車を売却することはできますか
今回のようなご相談の場合、
- 残価設定型クレジットの残価も含めた一括返済額(残債額)
- 現在の車の価値
- 自動車保険の車両保険加入状況
を正確に把握することが必要です。順番に詳しく説明します。
一括返済するにあたって把握すべきこと
1.残価設定型クレジットの残価も含めた一括返済額(残債額)
まずは、購入先の担当者や借入したローン会社に問い合わせましょう。残価設定型クレジットは、車を返却することを前提として返済計画を組み、月々の支払額が抑えるという特色があります。そのため、一括返済をして所有者になるには、あらかじめ設定された残価を含めた残債額を支払う必要があります。
2.現在の車の価値
ディーラーに車を返却する場合、実車査定を受けることになります。車の走行距離や損傷状況などの結果によっては、通常の返済額に加えて追徴金が課されます。今回のご相談では、衝突事故により不動になったとのことですので、追徴金は高額になる可能性が高いでしょう。
買取業者へ売却することも可能ですが、1.で述べた残債額を一括で返済することが必須条件になります。買取の査定を受けて、残債額が買取額を上回る場合は、追い金が発生します。
買取業者などと売買契約を取り交わした場合、キャンセルするのは難しいので、即決せず十分検討の上契約することをおすすめします。
3.自動車保険の車両保険加入状況
自損事故も補償される車両保険に加入している場合、保険会社で損害判定を行ったのちに保険金が支払われますので、残債を補填することが可能です。
全損認定を受けられた場合、保険会社で保険金の支払いと引き換えに現車を引き揚げる可能性があります。その際はディーラーに返却したり、買取業者等に売却することはできませんので注意しましょう。
<トラブル相談事例はこちら> 自損事故を起こし、入庫先で売買契約を取り交わしたが、保険会社で全損認定され車が引き揚げられることになった。売買契約のキャンセルを申し出たが、違約金を請求されている。
残債がある車は所有物ではない
修理をして、今まで通りローンを支払い乗り続けることもできます。事故を起こして気が動転するかもしれませんが、車の処分方法は慎重に決めましょう。
いずれにせよ、ローンを完済しない限り「車は自分の所有物ではない」と心得ることが大切ではないでしょうか。