
相談内容
一括査定を申し込み、買取業者数社と出張査定の約束を取り付けた。その中で一番高い買取額を提示したのが、最後に来た買取業者だったため、その場で売買契約を結んだ。代替の車の納車が1か月先なので、契約車両の引き渡しは新しい車の納車後と決めた。
翌日、別の買取業者から連絡があり、契約金額を問われたので答えたところ、「もっと高い金額が出せると思うので査定させてほしい」と言われた。もし高額提示であれば契約しようと考え、その買取業者に出張査定に来てもらったが、「車検証がないので査定できません」と言われてしまった。
車検証ケースを車から降ろした覚えもなかったため、最後に査定をした(契約をした)買取業者に問い合わせたところ、担当者が断りなくケースごと持ち帰っていたことが判った。
「車両の引き渡しまで1か月あり、車を使う予定があるから返してもらいたい」と話したら「車検証のコピーを送ります」と言われたが、それで車を使用して大丈夫なのか。
回答
自動車や道路に関する法律はさまざまありますが、公道での自動車運行時の自動車検査証(車検証)について、 道路運送車両法※第66条で、
(自動車検査証の備付け等)自動車は、自動車検査証を備え付け、かつ、国土交通省令で定めるところにより検査標章を表示しなければ、運行の用に供してはならない。
と定められており、必ず車検証を備えて運行することが義務付けられています。また、『写しでもよい』などの注釈もないため、車検証のコピーのみを携行して運行した場合、法律違反として罰金を科せられる可能性があります。
買取業者には車を使用する予定があると伝え、車検証のコピーではなく、原本の返却を求めてください。また、引き渡し前に事故などに巻き込まれることもないとは限りません。車検証だけではなく、自賠責証書や取扱説明書などが入っているケースごと返却してもらうことをお勧めします。
なお、2023年1月4日、車検証の電子化が始まりました。新規登録や継続検査等の手続きを行った車両については順次、従来の紙の車検証からA6サイズ程度の厚紙にICタグが貼付されたものに切り替えられています。電子車検証も今まで同様、公道を運行する際は携行することが義務付けられています。
<電子車検証についての詳しい内容は国土交通省の電子車検証特設サイトをご覧ください。>
◇ご相談内容からは少し逸れますが、売買契約後に他の買取業者の査定を受けることについてふれておきます。
契約後に他の買取業者の査定を受けること自体は問題はありません。ただ、今回のケースでは査定ができなかったことで契約には至りませんでしたが、仮に高額提示を受けたとしても、今ある契約に加えて契約を取り交わした場合、1台の車に対し契約が2件存在する、いわゆる「二重契約」となり、トラブルの元となります。
契約を取り交わすと履行する義務がありますし、車の売却契約に関してはクーリングオフできません。契約後に他の買取業者から高額提示を受け、契約を望むのであれば、今ある契約を契約解除してからにすべきことを心得ておきましょう。
※道路運送車両法とは・・・昭和26年に施行された法律で、その目的は、第一条「この法律は、道路運送車両に関し、所有権についての公証等を行い、並びに安全性の確保及び公害の防止その他の環境の保全並びに整備についての技術の向上を図り、併せて自動車の整備事業の健全な発達に資することにより、公共の福祉を増進すること」とされています。